ぶたパンダの冒険T 『初めてのぼうけん』

 
       ある日、ぶたパンダが家に帰ると、テーブルの上に大好きな
       イチゴのショート・ケーキがありました。
       おいしそうな、とてもおいしそうなショート・ケーキです。
       「今日のおやつです。 ママ」と、手紙が添えてありました。
       思わず、「やった〜!」と、叫びました。
       「ん〜、良いにおい・・・」と、大きな口をあけて食べようとした
       とき、何だかみんなでいっしょに食べたら、もっとずっと美味
       しいだろうなと思いました。

       そこで、白ちゃんや黒くん、巨大くんやちびたちまで呼んで、
       ほんの一口づつでしたが、みんなでいっしょに食べました。
       すると・・・不思議なことに、たったひとくち食べただけなのに、
       なんだかお腹いっぱい食べたような気がします。
       そして、「お腹いっぱいになったら、眠くなっちゃった〜」と、
       みんな、むにゃむにゃ寝てしまいました。

       ふと気が付くと、そこは木々の生い茂るジャングルの様です。
       「ここは、いったいどこなんだろう?」と、ぶたパンダ。
       「よし、お腹もいっぱいだし、みんなで探検しよう!」と黒くんが
       言いました。ちびたちも、口々にさんせいします。
       「それじゃ、黒くんが隊長だ!」、とぶたパンダもさんせいして、
       全員で探検に出発しました。

       バナナの葉の下をくぐり、羊歯の葉を分け、きれいな花を
       見ながら進むうち、なんだか良いにおいがしてきました。
       「あれ、この甘いにおいは、知っているにおいだぞ・・・」
       みんなは、元気いっぱいで、ぐいぐいぐいぐいすすみます。
       そのうち、木の葉の間から、遠くに山のようなものが見えて
       来ました。なんだか上の方は赤い色をしているようです。

       「もしかしたら、あの山は火山なのかも知れないね・・・」
       「よし、あの山を目指してずんずん進むぞ!」と、黒くん隊長
       が言いましたら、「おー!」と全員がさんせいしました。
       そして山を目指してぐいぐいすすむのですが、なかなか山に
       近づくことができません。
       「なんだか、不思議な山だな〜」

       そこで、黒くん隊長が言いました。「よし、もう、こうなったら
       最後の手段。巨大くんは、気球に変身だ!」
       巨大くんは、思い切りあたたかい空気を吸い込んで、みんな
       が乗れるくらいの、大きな気球に変身です。
       みんなは、近くにある木や葉を使ってゴンドラを作ります。
       「よ〜し、全員乗り込んだら、出発進行!」、「おー!」。

       木の葉を押しのけて、巨大くんの気球は、すら〜りすらり
       と空へと、のぼりはじめました・・・
       そして、森の上までのぼって視界が開けたとき、みんなは
       もう、思わず大かんせいです!
       なんと、山のように見えていたのは、大きなイチゴのショート・
       ケーキだったのです。火のように赤く見えていたのは、大き
       ないちごだったんですね。
       巨大くんも、思わずかんせいを上げてしまいましたから、
       穴があいて空気のふき出した風船の様に、ぴゆるーーーん
       と飛んで行って、ケーキの山についらくしてしまいました。
       でも、そこはやわらかいクリームのうえですから、だれにも
       ケガはありません。
       みんな、クリームまみれの顔を見あわせて大笑いです。

       イチゴのショート・ケーキ。優しい魔女が作った不思議な・・・
       とても不思議なショート・ケーキ。
       良いことをすると、その良いことは何倍にもなって・・・、
       悪いことをすると、何倍にも悪いことが返ってくる魔法の
       ケーキだったのです。

       もちろん、こんどはイチゴのショート・ケーキを本当におなか
       いっぱいになるまで食べたことは、言うまでもありません。
     
       じゃあね、まったね〜
 
                                   2004.11.19-2

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