新ぶたパンダの冒険U : M-T『ごん』

 
    むにゅっと目の前がゆがみ、ワームホールが開きました。いきおいよく
    飛び出したぶたパンダは、あたりの景色を見渡して、思わず見とれて
    しまいました。
    「うわー、夢のような、なんてすてきなところなんだろ〜」
    目の前には、紅葉の里山と、のどかな田園風景がどこまでも広がって
    います。
    「う〜ん」と、深く息を吸いながら伸びをしたとき、とつぜん「ドン!」と、
    銃声が響きました。
 
    「はっ、しまった!」
    我に帰ったぶたパンダは、あわてて銃声のした方へとかけだしました。
    「あっ!」
    そまつな家の戸口に、こぎつねがたおれています。そのそばには、栗や
    まつたけがこぼれています。
    思わずそばにかけよろうとしたとき、ぼろぼろの黒い着物を着たお百姓
    が近づいてきたのが見えましたので、あわてて物かげにかくれました。
    お百姓の手に持った鉄砲の筒口からは、まだ細く青い煙がでています。

    こぎつねを、しばらく見下ろしていたお百姓が、いいました。
    「ごん、お前だったのか。いつも栗やまつたけをくれたのは・・・」
    こぎつねは、ぐったりとしたままで、こくりとうなずきました。
    それをみたお百姓は、火縄銃をばたりと落しました。
    二人は、ごんぎつねと兵十に違いありません。

    「ぼくは、この重大な任務に失敗してしまった。みすみすごんを死なせて
    しまったんだ・・・」
    くやんでも悔やみきれるものではありません。ぶたパンダは、呆然として
    立ちつくしています。

    やがて、兵十がごんの体を抱き上げました。そして、外へと出てゆきます
    が、ぶたパンダには、もう、どうすることもできません。

    と、とつぜん、誰かがぶたパンダの肩に手をおきました。
    「しまった。見つかった」と、身を硬くして思わずふり向いたぶたパンダの
    前に、見なれた顔が並んでいました。

    「遅かったね」と、黒くん。
    「心配していたのよ」と、白ちゃん。もちろん、巨大くんもいます。
    みんなも、時空レンジャーに任命されていたのです。

    「ぼくは、みんなに迷惑をかけてしまった。ごめんね」と、ぶたパンダ。
    「手は打ってあるから、だいじょうぶ」と、黒くんがいいます。
    「鉄砲の鉛弾を、火薬を混ぜた紙弾に替えておいたんだ。ごんの体に
    とどく前に、燃えつきたはずだよ」と、巨大くん。
    「え、じゃあ、どうしてごんは倒れたのだろう・・・」
    「音に驚いたのよ。そのほうが都合がいいわ。さあ、手遅れにならないよう
    に、みんないそぎましょう」と、白ちゃんがいいました。
    みんなは、ごんを抱いた兵中の先回りをすることにしました。

    夕日を背にして仁王立ちする巨大くん。頭の上には黒くんと白ちゃんが、
    まるで鬼の角のようです。
    ぶたパンダは・・・、顔を真っ赤にしながら天狗の鼻のようなかたちに、
    巨大くんの顔にくっついています。
    そして、みんなは、大きな声をそろえていいました。
 
    「山の主である。おまえたちの互いを思いやるやさしさがとどいた。特別
    に反魂(はんごん)の法をさずけ、ごんの命をたすけてくれよ〜う!」
    そして、こう呪文をとなえました。
    「よせらくくよかなもでまつい。うゅじうょひとんご、いしさやろここ!」
    ぶたパンダは、ひゅっと飛びおり、小さくごんに活を入れました。
        
    「なに?なに?いまのはなに?なんの音?鉄砲?ぼくは撃たれたの?」
    と、気をとり戻したごんが叫びました。
    それをみていた兵十は、ごんの手をとって、やさしく静かにいいました。
    「ごん、すまなかった。おらは、お前のやさしさに気がつかなかった・・・」
    「おいらこそ、病気のおっ母に食べさせる、そんな、大切なうなぎだとは
    知らずに。おいら、どうやってあやまればいいのか・・・」
    長くながく、二人の影がのびています。

    みんなは涙をぬぐいながら、そっとそこを離れました。

    「よくやった。チームワークの勝利だ。君たちを選んだ私の目に曇りは
    なかったようだ」と、マリオネットのような動きをする隊長の声が聞こえま
    した。
    時空レンジャーの最初のミッションは、こうして無事に成功したようです。

    もちろん、ごんと兵十は、いつまでも仲良く助け合って暮らしましたとさ。

    めでたしめでたし
  
                                     2004.12.28

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