ぶたパンダの冒険U 『モンブランの森』  

 
        テーブルの上に、おいしそうなモンブランがありました。
        「今日のおやつは、モンブランです」と、メモがあります。
        「よ〜し、きょうもみんなを呼んで、いっしょに食べよう〜」

        今日も、白ちゃんや黒くん、巨大くんやちびたちを呼んで、
        ほんの一口づつでしたが、みんなでいっしょに食べました。
        すると・・・不思議なことに、なんだかとてもとても、お腹が
        すいてきて、からからからからすいてきて、ついに気が遠く
        なりました。「ああ、力がぬける、もうだめだ〜」

        ちょっと意地悪な魔女が作った、ちょっと意地悪なモンブラン
        だったのです。

        ふと気が付くと、そこは木々の生い茂るジャングルの様です。
        「お腹がすいたね、なにか食べ物を探そう」と、ぶたパンダ。
        「えへん、僕がたいちょうだ!」と、黒くんが言いました。
        「エヘン、僕がたいちょうだ!」ちびたちや巨大くんまでが口々に
        叫びましたので、なかなかまとまりません。
        それでも、それぞれ全員が隊長になって、なんとか出発する
        ことになりました。

        バナナの葉の下をくぐり、羊歯の葉を分け、石ころやぬかるみ
        に足をとられながら進みますが、食べる物はさっぱり見つかり
        ません。それどころか、森はしんしん深くなってゆくようです。
        みんなは、お互いの責任にしあいながら、うろうろと進みます。
        でも、本当に前へ進んでいるのかどうかは、だれも自信があり
        ません。

        「ざわり」、少し風が出たのか、木の葉が小さな音をたてました。
        風の音は、暗い森の中にひびきわたって、笑い声のようにも
        泣き声のようにも、歌う声のようにも、まるで「よそ者は、出て
        行け〜」とさけぶ声のようにも聞こえます。
        みんなはへろへろ座り込んでしまって、もうだれも声もでません。
     
        そのうち、空模様が悪くなって、しんしん暗くなってきて、ついに
        は、ぽろりぽろりと雨が降りはじめました。
        みんな、おおあわてで雨やどりのできそうな場所を探しました。
        そして、大きな木の根元に、みんなが入れそうな大きな穴が
        みつかりました。
        垂れ下がった気根が髪の毛みたいで、なんだか恐ろしい怪物
        の姿のように見える大木です。
        「大きな口の様で、こわいわ」と、白ちゃんが言いました。
        「へん、弱虫。僕は平気だい」と黒くん。
        「弱虫毛虫〜」とちびたちも叫びながら、われ先にと中へ飛び
        込みます。すると、そこに地面はありませんでした。みんなは、
        暗い穴を、きりきりきりきり落ちていきます。
        もう、巨大くんが気球に変身するひまだってありません。
        どんどん落ちながら、みんなは気が遠くなってしまいました。

        「あれ?なんだか、良いにおいがするぞ・・・」
        「目がさめたら、みんな手を洗ってきてくださいな。おいしいモン
        ブランがありますからね」
        みんなの前に、良いにおいでおいしそうな、できたてモンブラン
        が、た〜くさん並んでいます。
        「みんなが寝ているあいだに作ったのよ。みんな、なかなか起き
        ないから、こんなにたくさんできちゃったわ」と、にこにこしながら
        ママがいいました。

        みんなは、夢の中で散々歩き回って、もうお腹がぺこぺこでした
        から、それはそれは、すごい勢いでもくもくもくもく食べました。
        みんなのお腹がいっぱいになって、仲良くなって、とてもとても
        幸せな気分になったことは、いうまでもありません。
     
        じゃあね、まったまったね〜

                                    2004.11.19-2
 
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