にじお版 近未来イソップ物語 『オンドリと宝石』

痴れ者「にじお」の近未来イソップ物語 『オンドリと宝石』


   オンドリが餌を探していて、宝石を見つけた。すると、オンドリはこう叫んだ。 
   「なんと詰まらぬものを見つけたことか!俺にとっちゃ、世界中の宝石よりも、
   麦一粒の方が、よっぽど価値がある」



   そう言ってオンドリは、思い切り良くその宝石を蹴っとばした。確かに蹴ったの
   だが、宝石は、ころがるどころか、ぴくりとも動かなかった。
   その宝石は、見たところとても小さく、たいした価値もなさそうに見えたのだが、
   地面に埋もれている部分が、その何倍も大きかったのだ。

   すると、オンドリは大声で叫んだ。
   「なんてこった。俺は、とんでもないものに係わってしまった。最初からそこに
   あることすら、知らないふりをすべきだったんだ。俺は不幸だ、足が折れた」
   そう言うと、オンドリはその宝石をすっかり掘り出し、宝石の買い取り屋のとこ
   ろへと大慌てで走っていった。

   宝石を売ったその金で、質が良くて、うまい餌を大量にストックしたことは、
   言うまでもない。


   幸運に出合ったとき、往往にして人は、それを認めようとはしないものだが、
   それが事実だと分かると、周囲に対しては、決まって幸運を否定してみせる
   ものだ。
   良いことがあったのなら、素直に喜べ!

                                             2006.09.01

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