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知ったか その13  ● 天衣無縫 ●

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織女星(棚機つ女)

琴座の首星ベガ
7月7日の夕、天の川の
対岸にある牽牛星と
逢うという伝説が
七夕(たなばた)
織姫星






 
牽牛星()

鷲座の首星アルタイル
白色光を放つ
七夕伝説に名高い彦星
男星







五節句の一。天の川の両岸にある牽牛星と織女星とが年に1度相会するという、7月7日の夜、星を祭る年中行事。中国伝来の乞巧奠の風習と日本の神を待つ「たなばたつめ」の
信仰とが習合したものであろう。奈良時代から行われ、江戸時代には民間にも広がった。庭前に供物
をし、葉竹を立て、
五色の短冊に歌や字を
書いて飾りつけ、
書道や裁縫の上達を
祈る。七夕祭。銀河祭。
星祭。
 

たなばたつめ【棚機つ女】
はたを織る女。秋さり姫。
 織女星。棚機姫とも。  


きこう でん【乞巧奠】  
女子が手芸に巧みになることを祈る祭事。
 陰暦7月7日の夜、供え物をして牽牛・織女星を
まつる行事。
中国の風習が伝わって、日本では宮中の
儀式として奈良時代に
始まり、
後に民間でも行われた。


 久しぶりに「天衣無縫」と言う言葉を聞いた(見た)。田中外相がアーミテージ米国務副長官との会談をキャンセルしたことを、「ドタキャンは困ります」との見出しで報じた、インターネット版の朝日新聞(5月10日)の社説に「田中外相の行為は予想にたがわぬ天衣無縫ぶりだ」と書いてあったのだ。しかし待てよ、それってなんだか変だぞ!

 「広辞苑」によると、天人の衣服には人工の縫い目などがない意から、詩歌などに、技巧をこらしたあとがなく、いかにも自然で完美であるさまの形容。また、人柄が天真爛漫でかざりけのないさま。
天真爛漫とは、偽り飾らず、心に思うままが言動にあらわれること。無邪気なさま。とある。

 「困る」とあるのだから、これは肯定的な意味ではなく、むしろたしなめる意図で書かれていると考えられる。やはり「天衣無縫」や「天真爛漫」では誤用ではないのか、意図と違って受け取られるのではないか。それうを言うなら「天衣無縫」では無くて「言いたい放題・やりたい放題」、すなわち「傍若無人」ではないのかな?ね、田中さん?朝日新聞の社説を書いた人!

 ところで、どうして天上人の衣服にはの縫い目の無いことが分ったんのでしょうか?実はね、ここには、天上の女(なんとあの織女)と人間の男の織り成す機微があったんですね。


 この話は、唐の張薦が編集した「霊怪集」の中にあるのです。では、・・・

 太原に郭翰という若者がいた。早くに両親をなくし、ひとり暮らしをしていたが教養の豊かな好青年であった。ある夏の夜、月の光を浴びて庭先にまどろんでいると、どこからか香気が漂ってくる。その香りがだんだんに濃くなってくるので不審に思って空を仰ぐと、人影がゆらゆらと降りてきて彼の前に立ち止まった。目もくらむばかりの美しい娘で、黒いうすぎぬの衣に、白い絹のうちかけを着、翡翠の髪飾りを挿し鳳凰の冠をつけ、雲形の模様を刺繍した鞋(くつ)をはいている。連れている二人の侍女も絶世の美女であった。
 郭翰が身づくろいをして拝礼すると、娘は微笑みをたたえながら言った。
「私は天界の織女です。夫と別れて久しく、契りの絶えたまま鬱々としておりましたところ、父天帝から人間界へ降って保養をしてくるようにとお言葉を賜りました。あなたさまの清らかなお暮らしぶりを慕ってお訪ねいたしました。どうぞ私の願いをかなえ、契りを結ばせてください」
「望外の幸せでございます!」 
郭翰がそういうと、侍女たちはさっさと寝所を整え、織女のつけている紅絹の下着からは妙なる香気が立ち上り ・・・略・・・

・・・で、細やかな交情のあと、明け方彼女は雲に乗って帰っていった。

それから織女は毎夜たずねてくるようになり、そして、あるとき郭翰が戯れに織女に尋ねた。
「ご主人さまの彦星さま(牽牛・牽郎)はどうなさっているのですか? お一人でこのようなことをなさってかまわないのですか?」
「このことはあの人には関係のないことです。それに天の川でわけへだてられていますから、あの人に知れるはずもなし、たとえ知れたところでどうということもございません」
という返事。

やがて七夕の夜が来た。さすがにその夜は織女は現れなかった。
が、数夜たってからまた来たので、「どうですか?楽しかったですか?」と郭翰が聞くと
「天上のことはこの世とは違います、心を通い合わせるだけで他のことは何もありません。やきもちをお焼きになるにはおよびません」
「それにしても長かったですね」
「天上の一夜は、この世の五夜にあたるのです」
彼女はこの夜、郭翰のために天上の料理を持ってきてくれたが、すべてみたこともないものばかりだった。

そして、なにとはなしに織女の衣を見ると、その衣にはまったく縫い目がなかった。
不審に思ってたずねると
「天上の衣はもともと針や糸を使って縫うものではないのです」ということであり、そしてその衣は彼女が帰るときになるとひとりでにその体を覆うのだった。※

こういうことが1年ほど続いたある夜、彼女は郭翰の手をとっていった。
「天帝にお許しをいただいた期限が来てしまいました。今宵をかぎりにお別れしなくてはなりません」と泣き崩れた。
朝まで眠らずに別れを惜しんだが、翌朝彼女は振り返り振り返り天に帰っていった。
それから1年して侍女が便りをとどけてきたが、それきり音信不通になってしまった。
以来郭翰は、この世のどんな美女をみても心をうごかされることがなくなった。
家系を絶やさぬようにといやいや妻をもらったものの、どうにも気に入らず、夫婦仲も悪く、結局子も出来ぬままに終わったそうな。


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    徐ろに其の衣を視るに並びに縫無し。翰之を問う。翰に謂いて曰く、
    「天衣は本、針綫の為すに非ざるなり」と。
    去る毎に、輒ち以って衣服自ら随う。
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「霊怪集」

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